

楽しみの1杯
主人のレストラン修行の為、フランスにしばらく住んでいたことがあります。 お金も節約の毎日で、マルシェへ行って自炊の為の食材を買ったり、毎日公共交通機関などは使わず、歩く歩くの日々でした。 そんな中でも、マルシェへ行くのも、パリの街をひたすら歩くのも、とても良い経験だったし、フランスを味わうには、そんな節約生活によって、堪能できたのではと思います。 何と言っても、フランス人は時間とお金の使い方は上手だし、何よりも人生と生活を楽しんでいるというところが毎日感じ取れました。公園ではみんなのんびりと読書をしたり、ペタンクを楽しんでいたり、お金を使わずにそれぞれに楽しんでいるのです。 節約生活で唯一恥ずかしかったことは、外に洗濯物を干さないという暗黙の了解を知らず、豪快に洗濯物を干し、「どうしてこんなに天気がいいのに、みんな外に干さないのかしら...」などと呑気に思っていたことでした。主人に「こらこら、洗濯物は景観を保つ為に、外には干さないんだよ。」と言われて初めて気が付きました... フランスのおうちではアイロンで乾かすそうです。 でもそんな発見も実に楽


confiture yuzu et gingembre
主人の実家では父と母が色々な作物を育てています。 母は私にとって、まさしく新しい作物にチャレンジする開拓者のイメージです。 父は日々の作物を見守り、手当てする番人のイメージ。季節に合わせて、地を耕し、種を蒔き、成長をじっと待つ。 私は主人の実家に行くことが好きで、父や母の話が勉強になり、作物の様子や育て方を見ることがとても新鮮な気持ちにさせてくれます。 父や母は生活の糧として、「暮らしに根付いた作物の生産」をしていますが、私には、それが重要なことだと感じています。日々の暮らしのための作物。そして無農薬、肥料は自家製。 それは無駄なことをしない、節約するといったことから始まったことです。 昨年の秋には、母と二人で玉ねぎを干すため、1つ1つ紐で結わく作業をしました。 軒下に吊るされた玉ねぎを保存して1年かけて食べるためです。 今は色々な物が溢れ、生活に根付いた「必要性」ということが忘れ去られ、 「物」だけが一人歩きしている時代になっているのかもしれないと気付いた瞬間でした。 そういうことを感じる、父と母の畑を歩くのが私にとって本当に幸せな時間です。


Tartelette abricots au romarin
Are you going to Scarborough Fair? Parsley, sage, rosemary, and thyme, Remember me to one who lives there, For she once was a true love of me.... ローズマリーを見つけると、必ず手を出してすっと撫でてしまいます。これは癖。 私の娘も同じことをします。ローズマリーの油が手に着くのをそっと香る。 そして、この曲を口ずさんでいます。 その途端に、どこかへ旅に出たような気分になります。 ロマンあふれるハーブというイメージです。 ローズマリーに梅に似た甘酸っぱさの杏と組み合わせたいと思っていました。 色の組み合わせも大好きです。 このタルトの食べ方は、まずローズマリーをそっと唇で噛み、 その後、タルトを手で食べる... この食べ方が一番美味しいのです。 その瞬間、ユートピアに旅しに行ったような気分になります。

迷いながら、不安になりながら...
ふと手を止めて「作る」ということについて考え込んでしまうことがあります。 ただ作ると言うだけなら、私ではなくても良いし、豊かなこの時代にたくさんの素晴らしい物が溢れている。 「自分がどうして作って、食べてもらいたいという」気持ちが生まれるのか。 日々、立ち止まり、考え、迷い、時に眠れずということもあります。 こんな風に書くと、とてもネガティブなイメージが浮かぶかもしれませんが、 人として生まれて、当然の?であって、決して負の日々ではないです。人生はそうして続いていくのでしょう。ゴールなんてない。 でもそんな時は、いつも歩きます。少しだけ脳みそを風にさらす必要があります。 今日の朝の散歩では、スクラップ場のスクラップされ、積み上げられた塊を見つけました。 どれだけの紙の山。私はそれが、お菓子に見えた。 ちっぽけなお菓子。でもとても惹かれる物を感じた。 すごいと言われるお菓子は、他の素晴らしいパティシエさんにお任せして... 私は隅っこのちっちゃなお菓子を作っていきたい。 でもそれには、私の気持ちをたくさん詰めて。 また少しずつ、歩いていこうと思いま


あけましておめでとうございます
2016年が明けました。 今年は私の故郷である石川県金沢市で新年を迎えました。 この季節になると、幼い頃祖母と手をつなぎ、おせち料理の為の材料を買いに近くの近江町市場へ行ったことを思い出します。活気溢れる市場には新鮮な魚や野菜、乾物が色とりどり... 鮒の番茶煮、なま酢、ブリやヒラメの昆布〆、田作りに松前漬け、黒豆に、鱈の子の煮付け..祖母が割烹着姿で12月25日から手間暇かけて作ってくれたのが忘れられません。 祖母は「ただただ家族や親戚、近所の方に喜んだ顔を見れることが嬉しくて作ってるだけ」といった感じでした。そして作ることをとても楽しんでいました。鼻歌など歌ったりして... そして私に、調理方法などを教えてくれたのです。その教えの中には、食材を無駄にしないこと、丁寧にゆっくり調理すること、道具を正しく使うことなどがありました。 その時に私は、作ること、食べることの楽しみを感じたように思います。 そして食を通して、温かな時間と空気が生まれることも感じました。 今でも忘れられない大切なお思い出です。そして今の私に導いてくれた原点でもあるかもしれま