土の香りと温かさ
季節が移り変わり、少しだけ体も心も追いついていないことを感じて、小休止しようと思い、両親の畑に飛び込んだ。
私が右往左往しても、畑はどしんと構えていて広い。それだけで何度救われたかなと思う。
両親の畑は飾らないし、農薬も使わないし、水やりも雨水のみ。葉は虫喰い、雑草と共生、形もバラバラだ。でも関東ローム層の大地が毎年温かな作物を実らせる。大地に抱かれる作物は本当にキラキラして、私はクラクラする。
最後のイチゴを摘み、皮が薄く甘みと酸味のバランスがよく、みずみずしい。
土の近くにいると、自分のトゲトゲしていた気持ちも土に溶け出していくみたいだ。
この気持ちと空気も冷めやらぬまま、すぐに作業に取り掛かる。大切なのはそこなんだ。
鍋の中に全てを閉じ込めて、「美味しい」を作る。